脱げなくなった着ぐるみの物語

 デコちゃん人形は夫のお気に入りの人形だった。
キメのポーズとお顔があって、そのポーズをとるだけで
夫の気難しい顔は
あっというまに破顔一笑。
「かわいいですね~。」とデコちゃん人形の頭をなでるのだった。

 デコちゃん人形もそんな夫の
かわいいだけのお人形でいたい
と思っていた。

 「私はデコちゃん人形。夫君のお飾り人形。
  夫好みの薄化粧をして
  淡い色の服をかわいく着こなす。
  そして夫の腕にぶらさがり歩いていれば
  何も考えずとも人生はすすんでいき
  2人はとてもハッピー。
  やがておじいちゃん、おばあちゃんに
  なってもデコちゃん人形は
  かわいいおばあちゃん版デコちゃんになって
  これまたじいちゃん版夫君のとなりで
  まったりとお茶を飲むのでした。
  めでたし。めでたし。  」

  という具合にデコちゃんは勝手にお話を考え
  現にそうなると思っていた。

 しかし、何年かするとデコちゃんにも
2人の子供が生まれた。
 
 デコちゃんのMサイズの形よかったバストは
あっという間に牝牛のように筋が立ち
LLサイズのミルクタンクに変化した。
 子供達は入れ替わり
立ち代りそのおっぱいに吸いつき大きくなっていった。

 でこちゃん人形をかわいがっていた夫君は
このおっぱいをみて
 「シオマネキみたいだね・・・・。」とひとこと。

 シオマネキとは
片方のはさみがすごく大きいカニである。

 デコちゃんのおっぱいは最初から左のほうが大きいのだが
出産、授乳のプロセスを経るうちにその傾向が
より顕著になり、大きく主張する左おっぱいを見て
夫君はシオマネキを連想したらしい。
どうやらこの頃から
デコちゃん人形は夫にとって
かわいいだけのお飾り人形から
へんな生き物」に変化していったらしい。

 着ぐるみの人形はテーマパークから
その辺の量販店のキャンペーン活動まで
子供達をあつめる絶好のキャラである。

 デコちゃんの子供も例にもれず
デコちゃんがクマさんの帽子をかぶったり
したら大喜びだった。

 子供の喜ぶ顔はデコちゃんにも喜びで
こうしたらウケるかな?!と日夜ネタを考えるデコちゃんとなった。

 そうしている内に、デコちゃんの腕には子供が寝たとき
枕にするに丁度いいような、
柔らかくプニョプニュしたものが付いてきた。

 おっぱいの横、二の腕あたりにこのプニュプニュは
具合よく付き、子供がおっぱいを飲んで
寝入ってしまうのに好都合だった。

 デコちゃんは子供をかかえ
プニュまくらを差し出しながらよく一緒に寝入る日々が続いた。
幸福感に包まれる瞬間でもあった。

 このころは夫君はかつてデコちゃんという人形を
持っていたということも忘れかけていた。

 デコちゃんも自分はお飾りの人形ではなく
授乳人形でもあるらしいと思い始めていた。

 そして、なにより子供たちにとっては
おっぱいもでるが
ふわふわな着ぐるみ人形でもあった。

 「おかあさんの腕ってふわふわ~。」ってな具合で
例の二の腕のプニュをさわり満足するのだ。

そして、プニュプニュはデコちゃんの知らぬうち
体のほとんどの部分
お腹、背中、ももと付き
デコちゃんを完全な着ぐるみ人形へと変化させていった。


 「着ぐるみだもの。いつかは脱げばいいさ。」
デコちゃんは昔の体にプニュプニュの着ぐるみを
着てるだけの気分でいた。

 「そうさ。脱ごうと思えばいつでも脱げるさ。
  ただ、子供が喜ぶから脱ごうと思わないだけさ。」

 やがて、子供は大きくなり入学式を迎えた。
式と名がつけばフォーマルな装いを要求される。

 着ぐるみ人形デコちゃんには、もはや着られる服など
存在しなかった。もともとの服のサイズは9号だった。
 
 ショーウィンドウのマネキンが着ていた服を脱がすよう
店員さんに命令していたデコちゃんの衣装ケースの服は
着ぐるみ人形になった今となっては
何の意味もなさないのである。

 「な~に。1~2ヶ月もちょっと運動して食事を減らせば
  また着ぐるみはスルっとに脱げるさ・・・。」

 しかし着ぐるみは脱げるどころか
益々バージョンアップしていくばかりだった。
より大きく、それらしい歩き方にもなっていくよう思えた。

 夫にとっては、着ぐるみ人形は子供に必要でこそ
あるが、あまり興味を示す対象ではなくなっていった。
 
 かつてかわいがっていたデコちゃん人形は
着ぐるみ道化人形になってしまった。
そして、影でこっそり別の人形。
バービー人形をかわいがっているという噂もでてくるように
なった。

 着ぐるみデコちゃんは涙にくれた。
道化であっても涙はでてくる。
しかし、泣いてもわめいても着ぐるみは
脱げなかった。

 来年4月。二度目の子供の入学式がめぐってくる

 着ぐるみデコちゃんはかつてのサイズより一つ大きいサイズの服
11号の服を買い、なんとかこの服が着られるように
着ぐるみを少しでも削ろうとしている。

 通販で願をかけるようこっそり入学式用スーツを購入した。
美しいフランス人形のようなモデルさんが着てる
そのスーツの写真を食器棚のガラスに貼り付け
着ぐるみを脱げるよう努力と意識改革を行っている
今日この頃である。
  へんないきもの

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この記事へのコメント

オジョ
2007年11月28日 15:39
デコ人形さんへ(笑)
さいきん体重が止まったままです。
減らなくなってしまいました。
低カロリー食事続けているのに減りません。
私も、脱げない気ぐるみ状態・・・(~_~;)
でこまる
2007年11月28日 18:01
オジョさん
えっ?そうなんですか。
例の1日、1400カロリーの食事を
続けてもそれはもう現状維持
なんですか?
 私はひとつずつの食事は低カロリーに
できても、どうしても間食の誘惑を
たちきれないでいます。
 オジョさんの徹底ぶりに
尊敬の念をいだきます。
http://porter.byoubu.com/
2013年06月08日 06:19
ベージュとブラウンで悩んでいるのですが、どちらのほうが使い勝手がいいと思いますか?

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