思春期の君

 小さな苗木を小さな植木鉢にいけてみる。
すぐに「きゅうくつきゅうくつ。こんなんじゃ育てないよ」と言っているのを
感じる。

 だから小さな庭にそっと根をひろげさせてやる。
そうするとプールや海に踊り飛び込む夏の子のように
グングンと大きく枝葉をのばす。
美しい青葉に見とれる時期を過ぎ梅雨の水をがぶ飲みしはじめたかと思うと
いつのまにか大きくそびえたつような幹になり、
見上げてもてっぺんは目にはいらなくなる。

隣家との境界近くに植えようものなら、隣家にまですぐに枝が
のびヒヤヒヤする。「次の休みのひには切らなきゃ迷惑かけちゃう・・・」



 小さな靴下を愛でながら洗濯を干す。
座布団に昼寝する赤子の顔が太陽の光に照らされる。
その横顔を添い寝しながらながめる。
「後光がさしている?。光をまとってる。それとも光がこの子にあつまってる?」
いままでみたことのない神々しさをわが子に感じあきることなく寝顔をみとれた。

 やがて座布団に収まった体は足がスーッとのび
手首の輪ゴムのあとようなプクプクの肉の食い込みリングもなくなり幼児になった。
「きゅうくつ。きゅうくつ。また靴を買ってよ。ズボン買ってよ。」

 だから服を買うときはいつも月齢より2~3歳大きい子のを買った。
そうしたはずなのに次の季節になるともう着られなくなった。
たくましくなっていく背中と筋肉質になっていく手足。

電車にのるのも施設にはいるのも小人ではなくなった。
部活動に励みペットボトルの水をがぶのみし、飯はドカベンをたいらげる。
若木は枝葉を手足を大きく奔放のばした。
もう上の方が見えない木のように生活全般は見えない。
隣家との境界が気になる植木のように、
友達関係のトラブルも気になるが介入も難しい。

 思春期とは大きく伸びはじめた若木だ。
時に若木と同じような感情も抱く。

 「なんでこんな木を買って植えてしまったのだろう?
  枝が暴れてしょうがない。手間がかかってしょうがない。
  もう切ってしまおうかと」


 でもヒマをみて少し枝をトリミングする。
そんな感じで話かけじゃれてみる。

 「うん~」
 「すう~。は~?」とまさにすかしっぺごとくの返事しか返ってこない。
 いつも肩すかしのような感覚。私一人のシャドウボクシング。

 でもいつかきれいな花や思いがけずできた果実をみつけられますように。

 今日も肥料をやるため米八合を研ぎ夕飯の準備にとりかかる。






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