夫と私の間には・・深くて暗い・・


自転車で近所を走行中の夜間、歩道にキラリ光るものを発見。

「ドスだ」すぐに思った。
決してサンマではない。

一度は通り過ぎる。
しかし、通り過ぎながら周りにそれの持ち主と推定される人物がいないと
確認する。
バックで戻り対象物ドスと思われるものをマクロ的視線で再確認。

「やはりドスだ。血痕付着なし。さやは近辺になし。」
そしてその場を数メートル離れる。

さてどうしたものか。
素知らぬ顔で家に帰り夫が作ってくれているであろう夕食にありつく。
なにせ腹が減っている。
数メートル自転車をこぎだしたところで
頭の中で架空の事件が展開しだす。

ドスを持って人を切りつける容疑者が突っ走っている映像。

だめだ。恐ろしい。ここにこれがある限り、今日一日
物事がうまく運ばなかった人が道を誤ることになるかもしれん。

では、拾得物として警察に持っていく。

(どうやって?サヤもないから持った瞬間、はたから見れば
ナイフ持ってたたずむ不審者に早変わり)

(違うんです。違うんです)という映像が今度は頭の中で再生。
「いやだね」のボタンがあったら連打する。

とりあえず家に帰って夫に相談。

家には明かりがつき、夫は得意の豚肉生姜焼きを仕上げ
まさに夕食の席に座ろうとしているとこだ。
生姜と醤油の焦げた香りが鼻をくすぐりご飯の湯気のむこうで
夫と子供がいる。
夫は単身赴任中に料理の腕を相当あげた。
チキンソテーと生姜焼きの店を開いたらいいと思うくらいうまい。

「ドスがおちていたんだ。道端に。ドスだよ。ドス」私は興奮気味にうったえる。

「へ~。そう。まあ、とりあえず、食べな。」夫はテレビを見ながら答える。

一度はうながされるまま座る。
しかし、箸を持つ前に不審者が先ほどのドスを発見してる映像が
頭の中でアップされる。

「警察に電話してみる。」私は箸をおく。

夫は幸せそうに豚肉と器用に刻んだキャベツをほうばる。

「110番でない地元の警察署に電話してみる。」
私は電話の受話器を取る。
夫は湯気のたった味噌汁をすする。

警察はドスが落ちてた住所から最寄りの担当者にまわす。

警察「で・・それはどんなナイフでしたか?」

私「ドスだよ。ドス。ヤクザ映画のラストシーンでヒットマン的な人が
  『くたばれや~このくされ外道が~』的に懐からだして
  突っ込むときに使う あのドスですよ。」
と、答えたかったが無難に大きさ形状を述べるにとどめた。


受話器を置き夫に振り返り報告する。
「パトロールに行ってみてくれるって。」
一市民として治安に貢献したようでほっとしたような。

夫は豚肉生姜焼きを箸でつまみ口に運び
ゴクリとのみこんだ後言ってのけた。

「そっか。そうすると、ドスをお巡りさんがひろって
 一定期間内に持ち主がでてこなければそのドスは
 もれなく、でこまる(私)のものになるんだね。」とニッコリ笑った。

 「いやだね」と「いらん」のボタンを黙って頭の中で再連打。

男と女の間には深くて暗い河がある。

夫と私の間にはうまくて温かい飯がある。

しかし、危険と隣り合わせの街でもあった。























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