単身赴任中だった夫の持ち物に嫉妬する

 例えば「布団一式」に嫉妬した。
去年の四月、夫が単身赴任を終え東京に戻ったとき。
電化製品などほとんどは次に名古屋で勤務する人にゆずったり
したけど、ゆずれないものは持ち帰った。

 布団一式は引っ越しやの布団包み袋にきゅうきゅうに収まり
大きなクッションのようにやってきた。

 「これはいらんからこのまま粗大ごみで捨てよう。」夫が言った。

その言葉に嫉妬した。
証拠隠滅的だ。反射的に思った。
だから、バリバリとその特大クッションをやぶり中身を点検した。

 もっと黄ばんで汗ばんでを想像した。
だってほぼ干されることもなく単身用マンションの床に直に敷いてあったものだ。
でもサラッと結構ふつうの顔でお目見えしたその布団一式の普通さに
私はまた嫉妬した。

 細々したものにも沢山した。
「しわ取りスプレー」に嫉妬した。
顔のシワをとるものでなく(そんなもんあったらほしいけど)
洋服のしわとり用。

 そんなもんなんでつかうんだ?
 東京にいたときは見向きもしなかったろ。
 だれのおすすめか。

「高級テッシュー」

 薬の店頭で5個パック198円のあの1個あたりの平たさと、
それのママチャリの後ろにも前にも積みにくさに閉口しながら
運んでいる東京妻・私の苦労を相手にもしないような
あの1枚ごとガーゼのような優しさとふんわり感に嫉妬した。

 どうしてこんな高級品を置いていたのか。

 嫉妬は育毛用高級品シャンプーにも育毛用品の多さにも及んだ。
 自分が使えないものだと余計にまた嫉妬の対象にもなる。


  極めつけは「アロハシャツ」だ。
 
  ひっそりハワイにでも行ったのか。
 そんなことはパスポートでもみればすぐにわかることだが
 なによりも、そのアロハがキチンとクローゼットの中心でうもれることなく
 綺麗にハンガーにのっかり、最初からここが指定席ですとばかりに
 そこの小空間に南風をふかしてるのにメチャメチャ嫉妬した。
 
  この日当たりの悪い北向きの家での不釣り合いさ。
 
 誰もがかんじきを履いて雪道の轍を歩いているところを
 ウクレレ弾きながらのアロハ野郎が
中央を裸足でモンローウオークしているみたいに場違いだ。

  そのアロハ野郎とはつまり夫でもある。
 なんと、そうして、そのアロハで去年の夏のある日夫は会社に通勤した。
 某商社勤務。勤続二十数年。役職課長。
 
 「今日は内勤だから・・・」そう言ってた。

  そりゃそういった地方公務員も医者もいるとテレビで見たことがある。
 親しみやすさ、子供から怖がれないようにとかそんな理由で。

  でもそういった職場でなくクールビズとも形容できない
 オフィシャル・アロハ・・・・・・。????。!!!!

 「アロハ~」の言葉には「こんにちは」 「さよなら」「アイラブユー」の
他にも「形容できないジェラシー」という意味が私の辞書には加わった。

  
 
 

  



 
 

 




 





 


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